クラプトンとピーター・グリーンのブルース人生

今夜のBGM・・・ Fleetwood Mac / English Rose
昨日のクラプトンについての記事の続き。
ブルースという音楽に魅せられながらも、白人らしいセンチメンタルな感覚あふれるプレイと作曲能力でオリジナルな世界を築き、21世紀になってもトップスターとして君臨しているクラプトンに対し、スタート地点はほぼ同じながらも、まさに「ブルースの悪魔に魂を売り渡した」かのように、凄まじい演奏を残した後、急激に失速していったのが、初期フリートウッド・マックのピーター・グリーンでしょう。
クラプトンの「フロム・ザ・クレイドル」をなぜ好きになれないのか昨日から考えていて、確かに力が入りすぎてるからというのもあるんだけど、決定的に欠けているのが「貧乏臭さ」、「不幸臭さ」、「いかがわしさ」の3点だというのが今日解った。(笑)
たしかにまあ、クラプトンもアル中だったり息子さんが亡くなったりと、いろんな不幸を乗り越えてきてるんだろうけど、なんといっても今や世界のVIPですからねえ。そうなってからの彼の音楽が魅力に欠けると言いたいわけでなく、大好きなんだけど、彼のセンチメンタルな歌や曲の中でこそ際立つブルースの香りが好きなのであり、ことストレートなブルース音楽をやるとなれば、ゴージャスではやっぱりいかんと思うのです。それはブルースという音楽の本質に反しているのです。
「最近のB.B.キングの音楽は十分ゴージャスだぞ。あれはブルースではないのか?」
確かにそうですし、あの人からあんまり「不幸臭」は感じませんが、あのおっさんの存在自体がイカサマくさいというか、十分いかがわしいし(ほめ言葉です)、そもそも「体臭」キツそうじゃないですか?それだけでも十分ブルース。クラプトンは近づくと香水の匂いがしそうじゃないですか。それはブルースじゃない。(どんな基準じゃ!)
その点、このフリートウッド・マックの「英吉利の薔薇(English Rose)」には、「録音の貧乏臭さ(時代のせいもあるが)」、「その後のピーター・グリーンの人生を予見させる不幸臭さ」、「ジャケットのいかがわしさ」の三拍子完璧に揃っております。白人の演奏したブルース・アルバムの中では最高峰に位置するでしょう。
とにかくこのアルバムの「燃える恋(Love That Burns)」での、ブルースの悪魔にとり憑かれたグリーンのギターとヴォーカルを聴いてください。演奏から不幸が染み出しています。堕ちるとこまで堕ちてみたい夜は、この曲を聴きながらウイスキーのボトルを空けましょう。
初期マックで忘れてはいけないのが、もう一人のギタリストのジェレミー・スペンサー。この人もグリーンに負けず劣らずの熱演を聴かせてくれているのですが、グリーンとは違い、悪魔にとり憑かれたというよりも、彼の憧れの黒人ギタリスト、エルモア・ジェイムスその人にとり憑かれています。まるでイタコのように憑依され、エルモア得意の「ウガガ、ウガガ、ウガガ、ウガガッ」というスライド3連フレーズを連発。このアルバムでは「ドクター・ブラウン」で聴かせてくれます。はっきりいってインパクトではグリーンより上。またライブでは、エルヴィス・プレスリーに憑依され、マックの音楽は無視してロックン・ロール・パロディ・ショウを繰り広げるそうです。変な人。
この記事へのコメント
axisさんとこ経由で辿り着きました(^^)奈良の鹿ともうします。
ピーター・グリーンは「白人がやるブルース」のバイブルみたいな感じで、それこそ初期のエネルギーはスゴイものがありましたよね。
とはいっても私は「ブラックマジックウーマン」のオリジナルってことで聴きだしたんで正当な経路ではないかもしれませんが、それでもやっぱりこのアルバムには度肝抜かれましたw
コメントありがとうございます。
わたしも最初は、「ブラックマジックウーマン」はサンタナのオリジナルだと思っていました。マックも「タンゴインザナイト」とか「噂」を先に聴いてたので、同じバンドとはとても思えませんでした。(実際リズムセクション以外は全員違いますけど。)
グリーンは97年にカムバックしてますけど、復帰後の作品は未聴なんです。どうなんでしょうねえ?
ともあれ、よろしければまたコメントお願いします。
30年間色々なギタリストのサウンドを聞きましたが。白眉はピーターでしょう。特にハードロードは
澄んだオーバードライブサウンドが楽しめます。
あのサウンドは他のギタリストでは、滅多に出せません。
はじめまして。
コメントありがとうございます。音の違いは確かに感じますが、わたしはギターを弾かないので、どうやったら音の個性に違いがでるのかよく解りません。精神的なことだけでなく技術的なコメントができる方が羨ましいです。
よろしければまた色々教えてください。
当年取って58歳。ピター・グリーンとマイク・ブルームフィールド(残念ながらマイクは既に亡くなっています)がフェバリットギタリストのオヤジです。今ピーターグリーン スプリンターグループのDVDを観ながら(聴きながら?)書いています。
この二人のギタリストはデビュー当時から大好きで、学生時代にバンドをやっていた時にたくさんコピーしました。
特にマイクがポールバターフィールド・ブルースバンドにいた時の「絶望の人生」は最高だと思っていましたが、先日マックの海賊版を手に入れた所(音質は最悪ですが)、この中にピーターの演奏する「絶望の人生」が入っているではありませんか!この曲のピーターのギターは凄まじく、クラプトンやべック等全く比較にはなりません。本当にマイナー系のギターを弾かせたら、今でも当時のピターグリーンに敵う人はいないでしょう。一度聞いてみる事をお勧めいたします。
はじめまして!
コメントありがとうございます。リアルタイム世代の方のご意見は勉強になります。ピーター・グリーン、最近また復活して活動しているようですが、全盛期は太く短く輝いていましたね。チャンスがあれば「絶望の人生」ぜひ聴いてみたいと思います。