ザ・ローリング・ストーンズ「スティッキー・フィンガーズ」

その昔、通っていたロック・バーのマスターがよく「リンゴ・スターは上手、チャーリー・ワッツは下手くそ」と口癖のように言っていたので、若かった私はそれを信じてずっと、「チャーリーのドラムは下手だけど好き!」と思っていたのだけれど、今はちょっと考え方が違っている。
チャーリーが下手という人って、その理由としてリズムが走るし、モタるからと言う。
ロック/ポップスの世界では、例えばジェフ・ポーカロのように、機械のような正確なビートを刻みながらバンドをグルーヴさせるドラマーがもてはやされるのだけど、チャーリーは自分でも言っているように「ジャズ・ドラマー」なのである。ジャズ・ドラマーがたまたま世界一有名なロック・バンドにいるのだ。
ジャズのドラマーって同じ曲の中でも平気で走るしモタるし、それってなぜかというとリズム・キープよりもメンバー間のアドリブのやり取り(インタープレイ)を重視しているからだと思う。
例えばマイルス・バンドの歴代ドラマーはみんなマイルスの顔色や出方を窺いながら、走ったりゆるめたり煽ったりしている。
チャーリーがインタビューで、演奏する時に何を重視しているか聞かれた時、「おれはキースのギターしか聴いてないよ」と答えている。
つまりストーンズでのチャーリーは、キースとの間合いや掛け合いを最重要視していて、ぶっちゃけリズム・キープなんて二の次なのだ。そのチャーリーとキースとの間合い、掛け合いがストーンズ独自のノリにつながっているのだと思う。
それがよくわかる1曲が「キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング」。頭からキースのかき鳴らすオープンGの荒っぽいリフに、合いの手を入れるように呼応するチャーリーのドラム。
https://youtu.be/Gz5mI6tqm_Q
ストーンズの魅力の真髄はこの2人の呼吸だと思っているので、今後ストーンズはミックかキースのどちらかが亡くなるまで存続するとは思うけど、私の中では実質ストーンズはこれで終わったと思っている。悲しい。
ちなみに比較対象として出したけど、ジェフ・ポーカロ大好きです。
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